2025年10月。若き技能者たちが日頃磨き上げた技術を競い合う「第63回 技能五輪全国大会」が愛知県で開かれました。栃木県選手団を牽引する二人、旗手を務める電子機器組立て職種に出場する本田技研工業株式会社・芳野選手と、宣誓を務める日本料理職種の国際テクニカル調理製菓専門学校・渡邉選手にお話を伺いました。二人の「技」に対する向き合い方や、抱いている「志」をお届けします。
昨年の技能五輪全国大会ダイジェスト映像
「目的」を見失わない論理的思考で、未知の課題に挑み続ける
本田技研工業株式会社・芳野選手
――技術系に進もうと思ったきっかけを教えてください。
中学生の頃からプログラミングや自分で何かを作ることに興味があり、将来の仕事にしたいと考えていました。そのため、より専門性の高いことを学びたいと思い、工業高校への進学を決めました。
――実際に技術の職に就いてみていかがですか?
日々新しい学びがあり、頭を使う場面も多いため、毎日が刺激的だと感じています。
――具体的にどのような場面で「学び」や「刺激」を感じますか?
回路設計という電子回路を設計するとき、知らない部品や知っている部品でも、これまでとは異なる使い方を求められることがよくあります。そのたびに自分で調べたり実際に使ってみたりして理解を深めています。大会に向けては、競技には制限時間があるため、常に臨機応変な対応が求められる点も、頭をフル回転させる大きな刺激になっています。
――日々の訓練で、成長や変化を感じますか?
物事を論理的に考えられるようになっていると感じます。なんとなく訓練するだけでは成長が難しいため、論理的なアプローチを徹底してきました。具体的には、はんだ付けの訓練で特定の減点を減らす際、物理法則や物質の反応を参考に「なぜその現象が起きるのか」を分析することで原因を特定しました。数値として成果が現れるという成功体験を積み重ねています。

――大会本番に向けて工夫していること、戦略を教えてください。
一つひとつの問題に対して、着実に対処することを心がけています。電子機器組立て職種では3つの競技のなかに「修理」というものがあり、不具合の解析を論理的に追う必要があります。以前の私はフォーマットの作り方、メモの仕方を固定しすぎて失敗が多いことがわかりました。今は、やり方を固定せず目的を意識した多くのアプローチを考え、自分の個性や特性を分析してより効果的な対策を立てています。
電子機器組立て職種
身近なIT端末として欠かすことのできないスマートフォンやテレビなど、数多くの工業製品の核になっているのが電子機器です。競技では、電子機器の設計や製品の製作、保守に至るまでの過程に必要な知識と技能を競います。

「余計なことをしない、じたばたしない。」反復練習が生む余裕
国際テクニカル調理製菓専門学校・渡邉選手
――料理の道に進もうと思ったきっかけを教えてください。
アルバイト先の店長がお客さまの要望を聞いて自在に料理を作る姿に憧れたのがきっかけです。ホールの担当だったので専門的な料理には触れておらず、未経験そのものでした。厳しい世界への不安もありましたが、今では野菜の切り揃え方や料理の理論を習得できていることに喜びを感じています。
――日々の鍛錬を通じて、自分自身にどのような変化を感じますか?
訓練を重ねることで、作業の優先順位や効率を意識して先読みができるようになりました。以前は思いついたことから手をつけていたため、競技の制限時間に影響することも多くありました。効率を意識した反復練習によって次第に時間を短縮できるようになり、精神的な余裕も生まれました。
――大会本番に向けて工夫していること、戦略を教えてください。
「余計なことをしない、じたばたしない。」指導してくださっている先生が口癖のように話してくれる言葉です。例えば、魚をおろすときも包丁を何度も動かさず、1回1回丁寧に入れる方が、結果的に早く綺麗に仕上がります。一つひとつの手順を確実に終えることを意識して、一度終わったはずの作業に戻るようなタイムロスをなくしていきたいです。

――最後に、大会への意気込みを聞かせてください。
初めての大会で不安もあり緊張もしますが、これまで自分がやってきたことと、先生方を信じ、自分の力を最大限に発揮したいです。
日本料理職種
「日本料理」は巧みな庖丁技術を使って、四季折々の食材の持ち味を生かして調理される伝統料理です。器の使い分けや空間を含めて美とされる盛り付けなど、料理全体が繊細そのもの。競技では、生、煮る、焼くなどの基礎的な調理技法を重視した課題で技能を競います。

自らの特性を理解し、壁を乗り越える力が次の技術を切り拓く
論理的な分析で精度を高める電子機器組立て職種の本田技研工業株式会社・芳野選手と、極限までに無駄を削ぎ落とす日本料理職種の国際テクニカル調理製菓専門学校・渡邉選手。分野は違えど二人に共通しているのは、壁にぶつかったときに自分のやり方を客観的に分析し、より良い方法を模索し続ける姿勢です。「やり方を固定しすぎず、本来の目的を意識する」こと、「反復練習によって気持ちに余裕を持つ」ことで課題をクリアしてきました。栃木県を代表し競う若き技能者たちの挑戦は、これから技術の道を志す人々にとっても大きな勇気になるのではないでしょうか。
本大会のダイジェスト映像も公開中です。これからの全国大会に出場するのはあなたかも……!?
昨年の技能五輪全国大会ダイジェスト映像